第3章 とある竜の君の一日
バサバサ!と数冊の本が机から落ちる。
ハッとして目を開けると見慣れた自室だった。本を読んでいるうちにうたた寝してしまったようだ。
ルークが挑発してきたのも、リリアがちょっかいかけると言い出したのも、気になって廃墟を見に行ったのも、ヴィルがルークを狙っている話を聞いたのも全て記憶に新しい。
何故それらの夢を見たのかわからないが、何かを暗示しているのだろうか。
最近眠りが浅いのも関係がありそうだ。今夜は早めに休むとしよう。
バタバタバタ!!!
……何やら廊下が騒がしい。寮内で何か起きたのだろうか。
その足音が徐々にこちらへ向かって来ており、マレウスの部屋の前で止まった。
「竜の君!!!」
扉を破壊しかねない大きな音を立てながら開けた男は、先程の夢の中心人物、ルーク・ハントだった。
中身は不明だが、大きな籠を抱えている。
「……ハント。ノックくらいしたらどうだ」
「え、あ、あぁ……すまない。慌てていたものでね。もう一度やり直すよ」
「いや、やり直す必要は……」
早々に部屋を出て律儀にノックをする。
仕方なしに返事をすれば、再び部屋へ入って来た。
マレウスは注意をしただけでやり直せとは一言も言ってないし、次から気をつけてくれればいいだけだったのに。
案外、天然なところがあるのかもしれない。
「それで、用はなんだ?」
「ムシュー好奇心が寮でお茶会を開くと聞いてね。居ても立ってもいられなくなったんだ」
「…………………まさか参加しに来たのか?」
「ノンノンノンノン!!!!!私は少しでも被害を減らそうとコレを渡しに来たのだよ!」
変人と名高いこの男でもリリアの手作りお菓子が振る舞われるお茶会には参加したくないようだ。
先程から大切そうに抱えていた大きな籠を押し付けられ、マレウスは眉間に皺を寄せる。