第3章 とある竜の君の一日
「何を熱心に見てるのかと思ったら……ルークが気になるの?」
「シェーンハイト……」
とくにする事もなかったのでボーっと窓から外を眺めていると、帽子を被った金髪がサバナクローの生徒にちょっかいかけているのが見えた。
飽きもせずにいろんな生徒に手を出すものだと半ば呆れていると、先日のリリアのようにひょっこりとヴィルが姿を現した。
「別に気にしてる訳じゃない。鬱陶しいくらいに目立つから嫌でも視界に入るんだ」
「その割には目で追ってた気がするけど……まぁいいわ。アタシね、入学式の時からずっとルークを狙ってるのよ」
「ほう、それはまた物好きな奴だな」
「ポムフィオーレは美意識が高いと聞いて楽しみにしてたんだけど、どいつもこいつも芋ばかり。アタシは農民じゃないのよ。畑を耕してる暇なんてないの」
どうやらヴィルのお眼鏡に叶うポムフィオーレ寮生はいなかったようで、酷く落胆している様子。
話が長くなるようならば、さっさと切りをつけてこの場を去る気でいたが、その気配を察知したヴィルは早々に本題に入った。
「でもあいつはこのアタシが認めるほどの優れた容姿の持ち主よ。まだまだ垢抜けない部分もあるけど、磨けば光る原石だわ。ルークはポムフィオーレにこそ相応しい。ハーツラビュルにはもったいないわ」
見れば、サバナクローの生徒はいなくなっており、噂の人物は茶髪と緑色の髪をした二人組に挟まれて談笑している。腕章を見る限りハーツラビュルの生徒だろう。
「それで、お前はポムフィオーレに引きずり込もうとしている訳だな?」
「ええ、勿論。どんな手を使ってでもアタシの隣に立ってもらうわ」
ルーク・ハントも厄介な奴に目をつけられたものだ。
フフ、とあくどい笑みを浮かべている彼は一体なにを考えているのやら。
変なことに巻き込まれないのなら外野が何をしていても構わない。
マレウスは興味なさそうに再び窓の外へ目を向けると、そこにはもう誰もいなかった。