第3章 とある竜の君の一日
「こんな所でどうしたんだい?もしかして私に会いに来てくれたのかい?」
「自惚れるな、人間。何故僕がお前に会いに来る必要がある?」
窓から飛び出して来たルークを適当にあしらう。
冷たく扱われてもとくに気にした様子もなく、彼は相変わらず楽しげに微笑んでいる。
「ノン。人間ではなく、ルーク・ハントだよ。名前で呼んでくれたまえ」
「……気が向いたらな」
「メルシー!それより竜の君、夕食はもう済んだかい?よかったら一緒にどうだろうか?」
「結構だ」
自分とのテンションの差が激しいため、この人間といたら疲れること間違いない。
お目当ての廃墟は見れたので、もうここには用はない。
さっさと帰るかと思った途端、ふよふよとルークの周りに何か宙を舞っていたのが見えた。
「坊や〜、夕食はまだかい?」
「俺たち腹減っちまったよ〜」
「……ゴーストか」
廃墟なのでゴーストの一匹や二匹いるだろう。別段珍しいものではない。
というかこの男、ゴーストと一緒に住んでいるのか。とことん変わった人間だ。
「竜の君、私はしばらくの間オンボロ寮で過ごすことになってるから、時間がある時にお茶会でもしよう。暇な時はいつでも来てくれたまえ」
「……気が向いたらな」
適当に会話を交わし、その場を後にした。
結局リリアは一体どんなちょっかいをかけたのか、わからずじまいだった。
もしかしたら途中で気が変わったのかもしれない。また後日様子を見ることにしよう。