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【twst】ルーク成り代わりは自由に生きたい

第1章 1


狩りも楽しいけれど、人との出会いもまた一興。
夕焼けの草原は、獣人が多い。この国を治めているのも獣人だ。
あ、私は歴とした人間です。ちょっと目と耳と鼻と顔がいい、ただの人間です。

獣人からすると人間は草食動物と変わらないらしく、甘く見られることが多い。
とくに治安が悪いスラム街を通ろうもんなら、一分と経たずに絡まれる。
そいつらを相手していくうちに自然と度胸もついたし、喧嘩も強くなった。
今日もまた絡まれるかな〜なんて思ってたら、後ろから走って来る音と怒鳴り声が聞こえた。

「おい、待てよ!泥棒!!」

ビュン!と効果音がつきそうくらい横を走り抜けて行った二人組。
一人はひったくり犯で、もう一人は被害者か。
よろしい。制裁の時間だ。

落ちていた空き缶を拾って高く上へ放り投げる。
重力に従って落ちてきた空き缶が腰の高さまできたら勢いよく蹴る。空き缶は、被害者の少年の横を通り過ぎ、犯人の後頭部を直撃した。
犯人が前のめりになった隙を見逃さず、被害者の少年は飛びかかった。

「俺からひったくろうなんていい度胸してるっスねぇ!!そのまま警察に突き出してやるっスよ!」

地面に倒した犯人の背中に乗り上げた大きな丸い耳が特徴的な男の子……おそらくハイエナの獣人は、犯人の腕を捻り上げ、自分の鞄を取り返した。

「トレビアン!!ナイス連携だったね!」

「まぁ俺一人でも大丈夫だったけど……一応礼は言っておくっスよ。ありがとさん」

彼はニッと白い歯を出して笑った。
か、可愛い……!

その後犯人は、私が通報した警察によって連行されていった。
男の子は財布の中身を確認して安堵していた。

「ふぅ……よかった。中身は減ってなかったっス」

「とんだ災難だったね」

「全くっスよ。俺も給料日だからって油断してたっス」

なるほど、給料日だったのか。
確かにご褒美の日は浮かれがちだよね。私も前世でやらかしたからね。

「本来なら通行料もらうんスけど、さっきの借りもあるし、チャラでいいっスよ」

通行料なんてあるのか……。
とりあえずチャラにしてくれたんで、お礼を言おうと口を開きかけた時、とんっと腰に何かが当たった。
見ると五歳くらいの獣人の男の子が何故か私に抱きついていた。

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