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内気な彼女

第1章 内気な子



準備が整って、現場に行くとつい先日挨拶した人がいた。
私が近づいていくと、向こうも私に気がついてくれたようで。

「おはようございます」

「おはよう、ございます。えっと、二階堂さん」

あいも変わらずの緊張具合に、相手もやや苦笑いな気がする。

「あー、そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ?ほんとに。俺らの方が後輩なんで」

「い、いえいえ。そんな。アイドリッシュセブンさんはとても人気のグループなのに。私、そんな、とても…!」

言いたいこともたくさんあるはずなのに、緊張で口が回らなくなってきた。
そのせいで、もう会話も成り立っていない。

「要するに、二階堂さんと共演できて嬉しいって意味です」

見兼ねた、湊川さんはすかさずフォローに入ってくれた。

「え、そうなんですか?いやー、人気女優の柏葉さんにそう思ってもらえるのは、嬉しいですね」

「湊川さん、そ、そんなこと言わなくても」

もう私の頭の中はヒートオーバー。
セリフなんて全部吹き飛んでしまったんじゃないだろうか。

「そういえば、二階堂さんのマネージャーさんは?一度ご挨拶をしたいのですが」

「今日は俺一人なんです。マネージャーはメッゾの二人についていて」

「それは大変ですね。ではいらっしゃった際はご紹介していただいても?」

「もちろんです。」

和気藹々と話している中私だけ空気になってしまった。
でも、ここから離れても一人でおどおどするしかないので、大人しくそばにいることにする。

私ももう少し社交性があったら良いんだけれど。
誰にも聞こえないぐらいのため息をついて、ピアスを触る。

すると遠くで撮影が始まる声が聞こえた。
それと同時に私を呼ぶ声が聞こえる。

「あ、すみません呼ばれたので行ってきます」

「いってらっしゃい、頑張って」

二階堂さんは何も言わなかったけれど、代わりに手を振って見送ってくれた。

監督さんの方に行って、どのシーンを撮るのかを聞く。
今日は、1話目の最初のシーンと、3話目のシーンを撮るらしい。

なんでも二階堂さんと私の予定があまり合わないみたいで、できるだけ私たちのシーンを撮っておきたいらしい。

あらかたの説明を受けてカメラの前に立つ。
この瞬間はいつも自分ではなくなっていく感覚が起こる。

だからだった、カメラの前では確かに私は別人の様になる。
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