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【グノーシア】【短編集】宇宙を漂う船の中で

第3章 目は口ほどに物を言う【ラキオ】


「ツバサ」
聞きなれた声が私の名前を呼ぶ。
振り返るとそこには愛しき極彩色。
「あ、ラキオ……」
「話がある。僕の部屋まで来てもらおうか」
「うん、わかった」
ラキオの後ろについて行く。
話とは、なんだろうか。
でも、丁度いい。私もラキオに話したいことがある。
下らないと一蹴されそうな、ほのかな恋心。
伝えられるだけでいい。反応は求めない。
そんなことを考えているうちに、彼の部屋の前まで来ていた。
「お邪魔します……」
「そこのチェアにかけなよ」
言われた通りにチェアに腰掛ける。
ラキオは向かいのベッドに座り、話を始めた。
「まず、君に言っておこう。僕が昨日君に言ったことは単なる冗談だ。君はそれを真に受けていたらしいね?これからはそんなことするんじゃない。僕が少しの心配の意をこめて言ってやったんだ。でも、それを上手く伝えられなかった僕にも少しの非はある。それだけは謝っておく」
「そ、そんな!私が上手く受け取れなかっただけだもん、ラキオは悪くないよ……」
珍しくラキオが謝ってくる。でも、彼には少しの非もない。
私がたまたまそのまま受け取ってしまっただけで、ラキオは心配して言っていたと話しているのに。
……心配、していた?……私のことを?
それって………
……やめよう。自分の都合のいいように解釈したところで、必ずしもそうだとは限らない。
「……続き、まだあるの?」
「あるよ。ツバサ、はっきり言ってあげよう」
ああ、やはり言われてしまうのか。
私には周りの人よりも好意的に見えていたけど、特に何も思っていないと。
ラキオは他人にあまり興味を示さない人。私も例外ではないんだろう。
少し怖いけれど、続きを黙って聞く。
「ツバサ、僕は君に好意を抱いている」
幻聴かとも思ったけれど、はっきりとそう聞こえた。
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