第20章 意識不明
‘鬼を滅したが、隊士をかばい怪我をした。意識が無い’
鴉からはこの情報のみしかなく、杏寿郎が意識をなくすほどの怪我を負うのはもう何年も見ていない。それこそ3年前の炎柱に任命されるきっかけとなった下弦の弐との闘い以来だ。
は、何もしていないと悪い方へ考えてしまうので、作業をしながら愛する夫の到着を待った。
そう遠くはない場所からだったので、実際にはさほど時間はかかっていないのだろうが、待っている時間は永遠の様に感じた。
「さん。大丈夫ですか?」
顔色が悪くなったを心配してしのぶが訊く。
「しのぶさん。ごめん 大怪我なんて久し振りで動揺してる。」
は取り繕うこともできず、正直に言う。
「大切な人だから心配は当然です。煉獄さんは丈夫ですから信じましょう。」
「輸血も薬もたっぷりありますし、私がついています。」
「ありがとう。しのぶさんがそう言ってくれると本当に心強い。」
しのぶはよりも年下だが、彼女の薬の知識と医療の腕前には絶大な信頼を置いている。
程なく、杏寿郎は運ばれてきた。
腕の骨は折れ、大きな裂傷がいくつもある。そして血気術の毒が一番厄介な様子だった。出血も多く顔色が悪い。
すぐさま輸血が開始され、毒に合わせた解毒剤も投与された。毒がどこまで回っているかが予後を決めることになるそうだ。
杏寿郎が庇った隊士がに必死に謝っているのをなだめ、他の怪我人の手当てをしながら杏寿郎の回復を待つ。
全ての隊士の怪我の処置が終わったのはもう夜が明けた後だった。