第19章 ※甘い夜
「その後いきなり家に招待されたもんね。」
「連絡先を聞いて会いに行こうと思って話しかけたが、待っている人がいないのなら、せめて我が家で疲れを取ってもらいたいと思ったんだ。」
「突然すぎてびっくりした。」
「そうだろう。君が驚いた顔もよく覚えている。」
にこにこしながら杏寿郎はを見る。
「私も、杏寿郎を見た時、その目と髪と力強い動き、ぱっと笑う顔。溌剌とした声。太陽みたいだと思った。」
「私、あの頃、いつ死んでもいいって思って生きていたんだ。私のせいでたくさんの人が死んでしまって、ずっと何も感じない灰色の世界の中にいた。」
「つらすぎて何も考えないように体を鍛えるだけの毎日。でも、あの日あなたに会って、私の世界には色と感情が戻ってきた。」
「びっくりしたけど、誘われるがままに来て良かった。
あの日あなたに会わなかったらもう私はとっくにこの世にはいないと思う。」
「それは俺もだ!」
「君が傍にいてくれたから俺はずっと前を向いて進めた。」
「お嫁さんにしてくれてありがとう。」
がにっこり笑って言う。
「俺の方こそ。俺と結婚してくれてありがとう。」
杏寿郎はそう言うとちゅっと唇を重ねた。