第19章 ※甘い夜
祝言の片付けも終え、任務の指令も来なかったので、久し振りの煉獄家での二人の時間をゆっくり過ごすことにした。
千寿郎が用意してくれた風呂にが先に入り、杏寿郎が風呂から出てくるのを縁側で待つ。ほんの数か月前まではここに住んでいたのに、とても懐かしく感じた。
少しずつ空は暗くなり、夜の帳が下りようとしていた。
膝を抱えて空を見ていたの肩にふわっと羽織がかかった。振り返ると風呂上がりの杏寿郎がそばにいた。
「どうかしたか?」
「ううん。色々と思い出してた。」
杏寿郎はそう話すの隣に座り、一緒に空を見る。
「私たち、初めて会った時の事覚えてる?」
「もちろんだ。鋭い太刀筋、凛とした瞳。月明かりの下に、はっと息を飲むような美しい君がいた。君は俺を見て花が咲いた様に笑った。」
「選別が終わった後の君は、最初とは別人みたいに目に一杯涙をためて他の人の手当てをしていた。俺は、お館様のご子息の説明なんて碌に聞かずに、君の横顔を美しいなと見ていた。どうやったら、君の事をもっと知れるのかばかり考えていたな。」