第20章 意識不明
2日目の朝
吉報はなく、杏寿郎のいる蝶屋敷へ戻る。
熱は下がったが、意識は回復しない。何の進展もないまま一日が過ぎる。
杏寿郎が運ばれて丸二日が経った。しのぶからは解毒剤はもう効いているはず。それでも意識が戻らない事には命の保証はできないということだった。
は、しのぶが言いにくそうに状況を説明してくれるのを聞きながら、万が一を覚悟しておけという事かと冷静に受け止めている自分に驚いた。
の方も、一睡もしていないが眠くも無ければ、お腹も空かない、どの位時が過ぎているのかもよくわからない様な状態になっていた。
日が暮れるとふらりとまた警備に赴き、朝日が昇り始めると杏寿郎の傍へ戻って来る。
3日目の朝
杏寿郎は熱も下がり、傷も骨折も少しずつ回復しているようだったが、意識は依然として戻らない。
は、手を握ったり、頬や頭に触れながら話しかけたりするしかできることが無い。
手を握り、優しく杏寿郎の何度も名前を呼びながら、ぼんやりと杏寿郎との思い出を思い浮かべる。杏寿郎の笑った顔、おいしそうにご飯を食べる顔。任務中の獅子の様な凛々しい顔。恥ずかしがる顔、少しすねた顔、子供の様な寝顔。もう殆ど見ることの無くなった落ち込む顔・・・。
そして握った手を眺める。長い指や形の良い爪。豆が何度も潰れて硬くなった掌。