第22章 未定
「パンダくん。棘くんは?」
詞織は太くてふさふさした首に腕を回し、振り落とされたないようにしがみついて尋ねた。
「棘は京都校の西宮に連れて来られて、加茂と一緒に硝子さんの治療を受けてる」
「そう……ならいい」
淡白にしか返せない自分が恨めしい。
もう少し気の利いたことが言えればいいのに。
「メグ、お腹は大丈夫?」
「他に聞き方はないのか?」
「何だ、恵。腹でも下したのか?」
ムッとした表情……は見えない。
それでも、パンダに揶揄われて、余計にムッとした雰囲気が声音から伝わってきた。
「呪力を流してなければなんでもない」
「よかった」
ホッと安堵の息を吐いていると、「それより」と伏黒が続ける。
「オマエ、いつの間に反転術式を覚えたんだ?」
「あぁ、あれ?」
反転術式というよりは、反転術式"もどき"のような気もする。
外傷を完全に治すことはできず、傷口を塞いで止血する程度、もしくは応急処置程度しか効果はない。
家入の完璧な反転術式には遠く及ばないのだから。
「棘くんとの特訓の成果。もともと詩音が使っていて、感覚は分かっていたから。棘くんとの特訓で呪力の制御とか歌に乗せる呪力の調整とかして……何か使えるようになった」
不完全だけど、と最後につけ加える。
身体を動かしながら術式を継続させられるようにもなり、体術も前より上手くなったと思う。本当に、狗巻には感謝してもしきれない。