第22章 未定
「詞織の術式も呪言の亜種みたいなモンだからな。系統が似ている分、棘に教わることも多かっただろ」
「うん」
そんな話をしていると、教師陣が観覧席に使っていた建物に戻ってくる。
「よくぞ、ご無事で」
迎えてくれたのは、京都校の三輪だった。
「メグが先。ショーコさんに診てもらいたい」
「あなたは?」
「わたしのはすり傷だけ。治してもらうほどじゃ……」
「ついでに診てもらっておけ」
伏黒に引っ張られ、「いってらっしゃい」と手を振るパンダを残し、医務室として家入 硝子にあてがわれた部屋へとやって来る。
「特級呪霊が出たって? とんだ交流会になったね」
タバコをくわえて、家入がタレ目がちな目元を細めて微笑んだ。
医務室のベッドでは、狗巻と加茂が治療を終えて眠っているのか、二人分のベッドにカーテンがかかっている。
「最悪ですよ」
どかりと椅子に座った伏黒に家入はタバコを灰皿でもみ消し、反転術式で腹部から伸びる呪種の芽を解く。
腹を触って感触がなくなったのを確認し、彼はすぐに自分と交代で詞織を椅子に座らせた。
「詞織の傷もお願いします。ほとんど自分で治したみたいですけど、痕が残るのは嫌なんで」
「なんだ。傷だらけの恋人は見るに堪えないか?」
「まさか。別に気にしませんよ。傷痕が消えないなら、それごと詞織をもらうだけです。でも、治せる傷なら治しておいた方がいいでしょ」
ボンッと顔が一気に熱を持ち、真っ赤になったのが自分でも分かった。
伏黒が自分を深く愛しているのだと。その愛情を感じて頭がクラクラする。
なぜ、そんなことを平然とした顔で言えるのだろう。