第10章 雨だれのフィナーレ【呪胎戴天/雨後】
「虎杖が死んだことは、俺も――……辛いって思う。正直、かなり堪えてる。でも、その喪失感を背負って、俺はオマエと生きていきたい」
これから辛いこと、苦しいこと、耐えきれないこともいっぱいあるだろう。けれど、それが生きるということだ。
「俺はオマエと生きていたい。俺が泣いたり、笑ったりするとき、オマエにも隣にいて欲しい。呪術師として、いつ死ぬかは分からないけど……だからこそ、一分でも一秒でも無駄にしたくない。最期の瞬間だって――俺はオマエを隣に感じていたいって思う――……オマエのことが好きだから」
その言葉は、自然と口をついて出た。
恥ずかしいとかそんな気持ちはない。
嘘偽りのない、伏黒にとっての真実。
「詞織――俺はオマエが好きだ」
揺れる夜色の瞳に自分を映し、伏黒はもう一度、はっきりと想いを形にした。
「メグ……」
『詞織! 惑わされないで! あなたがこの世で最も愛しているのはあたしでしょ⁉ そんな男……どうせ、この男だってあなたを遺して死ぬわ! 虎杖 悠仁みたいに! 耳を貸しては駄目! あなたにはあたしがいればそれで……』
叫ぶ詩音に星也が近づき、その細い腕を掴んだ。
「詩音……本当は、君のことも助けたいって思っていた。ずっと……悔やんでる。あの日、君を死なせてしまったこと。あんな選択をさせてしまったこと。無力な自分を――ずっと恨んでいる」
『や……やめて……そんなこと……っ! そんなこと言わないで……ッ!』
詩音が耳を塞いで星也を拒絶する。その間に、伏黒は詞織を抱きしめた。