第10章 雨だれのフィナーレ【呪胎戴天/雨後】
「その前に確認したいんだけど、詞織は叫んだ後に気絶した……それから目を覚まさないんだね?」
「はい。虎杖が倒れて――……最初、宿儺に連れられて呪霊の生得領域から出てきました。そのときすでに意識はなかったんですが……俺が宿儺と戦っている間に目を覚ましたみたいで……その後、虎杖が倒れたのを見て……たぶん、ショックだったんだと思います」
いや、ただ同級生が死んでショックだったわけではない。もちろん、それもあるだろうが。
おそらく、詞織のトラウマを直撃したのだろう。
虎杖 悠仁は心臓を抉られて死んだ。
伏黒の話では、呪霊にやられたのではなく、宿儺がやったらしい。どういう意図があったのかは知らないし、知るつもりもないが。
古来より心臓は、呪詛に使用すれば強力な呪物となり得る。
それを知った上で、十年前の【神ノ原の惨劇】のとき、詩音は自らの心臓を抉り出し、呪詛の媒体に使用した。
それも、詞織や星也たちの目の前で。
つまり、詞織にとって心臓を抉り出すという行為は、己の半身を失った十年前に直結するのだ。
「……恵の話を聞く限り、詞織の昏睡状態は心因的なものだ。だから――詞織の生得領域に入り、連れ戻す」
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