• テキストサイズ

夢幻泡影【呪術廻戦/伏黒 恵オチ】

第9章 グラン・ギニョールの演目【呪胎戴天】


『だろうな。だが。俺にばかり構っていると、それこそ仲間が死ぬぞ』

 正面を見ると、呪霊が大きく仰け反って頬を膨らませる。そして、放った。

 ボンッと壁が大きく抉れる。

「なんだよ、これ……? 呪術か?」

『呪術じゃない。呪力を飛ばしただけよ』

 虎杖たちの反応を見て愉しんでいるのか。
 それとも、戦うことに興奮を覚えているのか。
 呪霊はケタケタと笑っているようだった。

「詩音。オマエ、走れるか?」

『できるなら、とっくにやってるわ。でも、足が動かない』

 足が動かない。捻るか、最悪 骨折しているのかもしれない。

 背負って逃げることも考えたが、無理だ。
 道順なんて分からないし、それ以前に、誰かがこの呪霊を祓わなければ。

 虎杖は走り、右手の拳を握りしめ、デタラメに呪霊を殴りつけた。しかし、拳は簡単に受け止められ、弾かれる。

 いくら殴っても効かない。
 そうか。呪霊は呪術でなければ祓えないのだ。しかし、呪力の使い方など知らない。

 とにかく、時間を稼がなければ――……。

 瞬間――。

 呪霊が大きく手を広げ、光のドームを放ってきた。虎杖はドームに弾かれ天井近くまで飛ばされる。

『虎杖!』

「あっ……が……っ」

 詩音の呼びかけに応える余裕などなかった。
 地面に倒れ伏した虎杖へ、呪霊は畳みかけるように、両手に込めた呪力を放ってきた。呪力はみごとに命中し、壁にクレーターを作り、詩音の隣へ倒れ込む。

 強烈な痛みに、意識が遠のきそうになるのをギリギリで繋ぎ止めた。止まりそうになる思考を無理やり動かす。

 視線の先で、呪霊が大きく手を広げて構えた。また、あの光のドームで攻撃してくる気だ。
/ 381ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp