• テキストサイズ

【ONE PIECE】私の居場所~アナタの隣に居たかった

第4章 美しき諜報部員と参謀総長


彼女の部屋はバルティゴの中でも比較的上層階に位置する。その為、バルコニーから屋根を伝い上に行くことが出来る。
諜報活動を主とする彼女は単独任務が殆どな為、自室も他の兵士とは離れていたので、この場所に来るのは自分だけ。
1人になりたい時はここに来て海を眺める…彼女なりの気分転換の方法だ。


「ミスティ…か。」

夜の海を眺めながら、先程の夢を思い出し呟いた。

(何だか懐かしい名前を呼ばれた気がした…何年も前に捨てた名前)

『あれから7年か…早いね。』

7年、革命軍に所属してからの彼女のキャリア。その間に血を吐くような鍛錬と数え切れないほどの任務をこなしてきた。
その月日は、彼女を少女から女性へと成長させるには十分な時間だった。


そして"大切な人から自分が消えてからの年数"でもある。


選んだのは自分。
決めたのも自分。


誰も悪くない。でも、正直、思い出してくれると思っていた。だから、自分を捨ててでも近くに居ようと決めた。直ぐには無理でも3ヶ月とか1年とか。
そうどこかで願いながら気づいたら7年経っていた。


『…もう無理だよね』

記憶喪失なんて聞いたことはあっても実際に見たことがある人がこの世にどれ程居るのだろうか。
7年なんて思い出せないのならもう無理じゃないかと思ってしまう程の年数ではないか。その間、記憶がなくても成長はするし、新しく出会う人や経験だって増える。
私との思い出はたった1年だった。それを上書きしてしまう程の時間が"彼女"と"彼"の間には別々に流れたのだ。
今更、思い出したところで引き返せる訳でもないし、お互い今の生活がある。



ふと、先程の夢で出てきた別の名前を呼んでみた。

『エース…ルフィ…こっちも懐かしいな。』


(エースくん、ルフィくん、君たちの兄弟は私の事、忘れちゃって全然思い出してくれないんだけど…何とかしてくれない?)

顔も見たことない、記憶の中の話に登場する2人に彼女は呼びかけた。

(私じゃなくて君達がそばに居たら結果は違ったのかもね…何たって兄弟なんだから。)

任務中や人前では封印した涙がツーっと頬を伝う。


海を眺めながら静かに涙を流す彼女を満点の星々がキラキラと照らしていた。








『…そろそろ潮時かな』












──サボ
/ 398ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp