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真田弦一郎、異世界転移しました

第1章 プロローグ


関東大会の辺りから毎晩のように見る夢がある。
その少女……いや、最初は少女だった、と言うのが正しいだろうか。は、毎回夢に出て来ては俺の試合について友人に熱く拳を握りながら熱弁したり、ある時は俺のことを見つめながら「そんなに無理しないで良いんだよ…」と悲しそうに呟いたりする。
幸村が病気だと知って、酷く悲しみ、治ったと知った時は凄く喜んでいた。


その少女は夢を見る度に成長して行き、最早最近では少女……とは言えない程に成長している。
なんとも奇妙な夢だ。
一度幸村にその話をしたことがあるが、「真田は自意識が過剰なんだね。楽しそうで何よりだ」と満面の笑みで馬鹿にされた。故にそれ以降、誰にもこの話はしていない。

恋だの愛だのに現を抜かす暇はないが、毎晩夢に出て来るその女に、俺のことを真に理解してくれる存在に、俺は恋をしていた。



ーU-17合宿中のある日ー
言い訳は好かんが俺の名誉の為に言わせて欲しい。その前の晩、妙な夢を見て寝不足だったのだ。あの夢の女……あの女が夢の中で俺に泣きながら助けを求めていた。目覚めたのは深夜1時。
彼女が泣いていた。
俺に助けを求めていた。
夢の中では毎度彼女に言葉をかけることも触れる事も出来ずどうすることも出来んが、どうにも心に引っかかって眠れず、その時間から早朝も早朝、日の出の数時間前から練習を始めたのだ。
故に赤也の
「真田フクブチョー!危ないッス!!!!」
という声で蔵兎座のサザンクロスが頭にぶつかった事に気付いた。俺、たるんどる。


「「「赤也ァ!俺を殴れ!!!!」」」
叫んだ瞬間、俺はラッシュの最中の駅のホームに立っていた。

忙しなく行き交うサラリーマンやOLの視線が突き刺さる。

……合宿所、ではないな。
夢か……?

頬を思い切り己で殴る。痛い。同時に周囲の視線も痛い。紛れもない現実だ。

困り果てた俺は駅のホームのベンチを探す。
青いベンチに向かうと……「あの女」、間違いなく「あの女」と目が合った。マスクをしていようと分かる。俺を凝視しているのは相変わらずだが、どこか放心状態にあるようだ。

「お前………いつも俺を見ているな?俺が誰だか分かるか?」

そう言って腕を掴んだ。やっと会えたんだ。逃げられたら敵わんからな。

驚いたように目を見開き………
腕を振り払われ怒鳴られた。
むう。警戒されてしまったではないか。
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