第1章 夢の中の少女
「おいしい?」
「うん。これ、キミが淹れたんだろう?すごいね」
「えへへ、ありがとう!あなたにそう言ってもらえると嬉しいな。タルトも食べてみて!」
今度は、大粒のいちごが綺麗にデコレーションされた王道のいちごタルトを勧められた。
というか、口元まで持ってきて食べさせようとしたといったほうが正しい。
彼女からの熱い視線を感じながら差し出されたタルトを食すと、甘酸っぱいいちごとふんわり甘いホイップクリームのハーモニーに感嘆する。
思わず目を細めて「んーっ!」と唸ってしまう。
「お気に召しました?」
「うん、すごく美味しい。これはキミが作ったのかい?」
「うん。お菓子作りも得意なんだ」
可愛いらしい笑みを見せながら、彼女は自慢げに言った。
トレイの作った菓子に勝るとも劣らない……最高の出来だった。
趣味が合いそうだし、トレイとは仲良くなりそうだ。
「あなたは、わたしの初めてのお客さんだから遠慮しないで、どんどん食べてね!」
「それは嬉しいけど……でもいいのかい?今会ったばかりなのに」
「もちろんだよ。甘いものは幸せの味なの。明日もまた頑張ってね!」
彼女はまたにっこりと屈託のない笑顔を浮かべた。
無邪気で、悪意を微塵にも感じさせない実に子供らしい笑顔であったが……どこか不自然であった。
違和感を探るように、リドルは彼女をじっと凝視する。視線に気づいたアリスはこくりと首を傾げた。
「どうしたの?」
「えっ……あ、なんでもない……」
「ねぇよかったらリドルくんの好きなもの教えて? 次来る時までに作っておくわ」
何かモヤモヤしたものが胸の中に残ったが、気のせいだと思うことにした。考えたところで答えが出ることはないだろう。
この日を境に、二人は夢の中での奇妙なお茶会が始まった。