第2章 将来の夢
あれから一週間が経ち、夢の中での奇妙なお茶会は続いていた。
昼間はリドルはいつも通り学校へ行き、部活動をしてから帰る。夜になり眠りにつくとどういう訳か、彼女……アリスの夢の中へ引きずり込まれるのだ。
そこで出されるお茶やケーキなどを楽しみながら、今日あったことを彼女に話す。その間も彼女はただ笑顔で頷きながら聞いている。
そして今夜もそれは変わらない。
「それで、エースとデュースの頭にイソギンチャクが生えてね。全く……楽していい点とろうだなんて呆れて開いた口が塞がらなかったよ」
「その二人には悪いけど、わたしも見てみたかったなぁ。頭にイソギンチャクが生えてる人なんて滅多に見れないもん」
リドルは、学園生活で起きたことを彼女に聞かせた。
彼女は名門校のナイトイレブンカレッジに興味があるのか、リドルの話を毎回楽しげにニコニコと笑って聞いていた。
ただ、そこに座って、にっこりと。
「……僕の話は楽しいかい?」
「すごく楽しいよ。わたしの周りに魔法学校に通ってる人なんていないから、そういう話なかなか聞けなくて楽しい」
「そうかい。なら、よかった。でもたまには君の話を聞きたいな」
「わたしの?」
「うん。例えば……将来の夢、とか」
アリスは考えこむ仕草をして、ちらりと視線を落とした。
テーブルの上は、色とりどりのタルトやショコラ、果物などで隙間なく埋め尽くされていて、まるで宝石のような輝きを放っている。
絵付けも見事なティーポットのころんとしたフォルムも可愛いすぎる。稀少な茶葉で淹れる紅茶の香りもかぐわしい。
そして、自分に言い聞かせるかのように話し出した。
「好きなことを仕事にできたらいいな」
「好きなことって……紅茶かい?」
「うん。ちょっとしたイートインスペースを備えた紅茶の専門店で、作った小物やお菓子を売りたいな。そこで買ったばかりのお茶とお菓子を楽しんでもらって、一点ものの手作り雑貨を選んでもらえたらなって……」
「すごくいい夢じゃないか!」
リドルは、ぱぁっと表情を明るくさせて、アリスは驚きに口をつぐんだ。