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わたしは、この日のために【鬼滅の刃】

第14章 無限列車


「少年、もうそんなに叫ぶんじゃない」

いつもより声にハリのない杏寿郎がそう言った。

当然だ。
左目は潰されて、おそらく内臓も潰れてしまっている。

『杏寿郎様!杏寿郎様!』

杏寿郎の胸の中に抱き留められていた愛が体を起こす。
その瞬間、両腕に凄まじい痛みが走った。

『いっ…つ』

「すまない。君に俺の技が掠めてしまったようだ」

愛の両腕はひどい火傷のような状態で、皮膚が剥き出しになり爛れていた。

「すまない」
『杏寿郎様!そんなことは、今は…とにかく、横になってください』

愛は痛む手で、自分の羽織をちぎり、左目と腹部の止血を始めた。

「愛、俺にできることは?」

炭治郎が側に駆け寄り、そう聞いた。

『…ここ抑えて』

二人で杏寿郎に応急処置を施す。

『杏寿郎様…ごめんなさい、ごめんなさい』

愛はポロポロと涙をこぼしながら、謝罪を繰り返す。

炭治郎もポロポロと涙をこぼしていた。

『杏寿郎様、わたし…わたし…』

「愛も炭治郎も軽傷ではない。…自分の手当てをしなさい」

少しずつ血の気が引いていく杏寿郎。

『杏寿郎様は…喋っちゃダメです!わたし、諦めませんから』

『杏寿郎様も、諦めないでください!まだ、まだ…わたしは、杏寿郎様のお側にいたいです』

誰が見ても致命傷に近く、内臓はどうなってるかさえわからない。

愛は激しく後悔していた。

ちゃんと、助けられなかった
わたしは全部知っていたのに
ただ、知っているだけで何もできなかった
このまま、これ以上…どうしたらいいかわからない

『うう…ひっく』

「愛、君は俺の大切な人だ。俺がいなくても、強く生きてほしい」

嫌だ、嫌だ
わたしはこの日のために、頑張ってきた

「喋れるうちに喋ってしまう。聞いてくれ」

愛はぼんやりとした頭の中で、あぁ、このセリフはどこかで聞いたことがあると思っていた。

まずは炭治郎に、そして父や弟への言葉。
ゆっくりと力強く、一つ一つの言葉に重みがある。

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