第14章 無限列車
「奥義」
「素晴らしい闘気だ」
「やはりお前は鬼になれ 杏寿郎」
「玖の型 煉獄」
「破壊殺 滅式」
ただ走るだけじゃダメだ
あの速さには追いつけない
善逸が言ってことを思い出せ
足に血を巡らせ、一気に爆発させる
そして、そのまま大地を蹴れ!
『ああああああっ!』
愛はある一点にのみだけ集中させる。
猗窩座の右腕。
タイミングは一瞬だけ。
猗窩座が杏寿郎の煉獄を避け、腕をブチ抜くその刹那。
頭ではわかっているものの、そのタイミングを計る余裕などなく、杏寿郎の煉獄に巻き込まれてでも、あの腕だけは斬らねばならない、砂埃で視界の悪い中、集中力を高め、そのまま空高く飛んだ。
わたしには特別な力なんてない
そんなわたしがなぜか、この世界に飛ばされた
わたしはこの日のために生きてきたのだとさえ思う
そう、ただわたしに貴方を救わせて
わたしは、わたしの責務を全うする
もう、貴方を失いたくない
この後の運命がどう変わってしまおうとも!
『あああああっ』
愛はそのまま、空中で全体重をかけ、猗窩座の腕目掛けて全力で刀を振り落とす。
空中からの思いがけない奇襲。
そして、今まさに杏寿郎の鳩尾を貫こうとしていた右腕への攻撃。
右腕に何者かわからない刃が刺さっている。
斬り落とす事は叶わなかったが、猗窩座の攻撃を止めるのには十分だった。
「お前は何だ。俺と杏寿郎の闘いの邪魔をするなぁ!」
愛の刀は猗窩座の腕にはまって抜けない。
その背後を猗窩座の左拳が襲う。
「愛!」
杏寿郎が叫び、愛の首根っこを捕まえて手前にぐいっと引き、二人とも後ろに倒れ込んだ。
夜が明ける
まずい、逃げなければ
猗窩座からの追撃はなく、そのまま森の方へ走っていく。
炭治郎が刀を振り上げ、勢いよく投げる。
ゴウッと風を切る音が聞こえた。
「逃げるなぁ!卑怯者!!」
炭治郎が大きな声で追い討ちをかける。
「誰も死なせなかった!煉獄さんの…勝ちだぁ!!」
猗窩座の姿は見えなくなった。