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花火 ー呪術廻戦ー

第15章 差異


どこか申し訳なさそうに話す彼女から、目が離せない。コーヒーを運んできたお盆を両手で抱えるようにして持つ、黒髪の、小柄なその姿は、ひどく懐かしく、そして見覚えがあった。
思考の止まる七海に、スッと彼女の手が伸びて。首の後ろ辺りに触れたと思ったら、また、その手は彼女の目の前に戻された。不用意に自らに触れたその手に、体が動かなかったのは、懐かしい記憶が体を縛りつけたからだ。

彼女の指先には、緑の葉が揺れていた。


「これ、ついてましたよ」


ふふふ、と内緒話をするように声を潜める彼女の姿が、先程の夢とダブる。
自分は、まだ寝ているのだろうか。彼女の指先に挟まれた緑の葉が、桜の花弁でないことだけが、現実を煽る。

ほとんど、無意識に口が開いた。


「みょうじ、先輩…?」


あまりに力のない言葉に、それでも、目の前の彼女の目は、七海に負けじと大きく見開かれる。
驚きという感情を乗せたその瞳は、七海の姿を観察するようにマジマジと見つめ。
それから、あ、と漏れでた声と共に、曲げた人差し指が、彼女の口元に当てられた。


「七海…?」


確かめるように紡がれた声が、夢で聞いた声と重なり。七海は今度こそ言葉を無くしたのだった。

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