第14章 高専
「どっからどう見てもそいつ学生だろ!?」
「おかか!」
「人間の見た目はイマイチ分かんねぇけど、学生服着てるから学生じゃねぇのか?」
「究極の若作りなんだよ。制服はコスプレ」
「ちょ、悟っ、説明が面倒だからって適当なこと言わないでくれる!?」
だが、五条はそれ以上説明する気はないようで、なまえの言葉をスルーし、「君達はそろそろ授業でしょ?学生の本文を存分に味わっておいでー」と手をひらひらさせて二年生の3人を散らす。
彼等は十分に不服そうであったが、五条と家入の雰囲気から何かしらの事情をあることは察し、何なんだと毒づきながらも授業のため、教室へと向かって歩き出す。
その際、ふとパンダが振り返る。もちろん彼は詳しい事情など分からなかったが、なまえと呼ばれる彼女が、今後も高専と関わるだろうことを何となく読みとって。
「なまえ、これから高専に通うことになるんだったら、よろしくな」
なんだかんだ、彼女は学生として高専に通うことになるのではないかと、パンダは思った。先輩になるのか、同級生になるのかは分からないが、仲間として仲良くしたい気持ちは普通にあり、その言葉には他の二年生2人も同意見だったのだろう。
目付きの悪い真希と、語彙がおにぎりの具である棘も振り返る。「じゃあな」「いくら」とそれぞれなまえに向かって声をかけて。
そんな3人に、どこか心をくすぐられたような気持ちになったなまえは、言葉を返そうかと口を開きかけたが。
「ぅえ!?」
「はいはい、なまえはこっち」
え、空気読まないの!?読めないの!?
そう叫びそうになるぐらい、場の雰囲気を無視して五条は3人となまえの間に割り込み、彼女の肩を掴んでくるりと向きを変えると、その背を押した。
「まっ、悟さん!?」
「ちょうどよかった硝子、こいつ一回診てやって」
「あの!?」
唯我独尊が過ぎると不満気な声を上げながら医務室へと連れて行かれるなまえ。
そんな2人の様子を見て、五条の狭量を察した家入であったが、彼女もまた突然現れた親友と、とにかくゆっくり話をしたい気持ちがあり。2人の後に続いて医務室へ入るのだった。
(11年も経ってるっていうのに)
五条も私も重症だと、彼女は頭の片隅でそう思った。