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花火 ー呪術廻戦ー

第13章 再会


「あ、悟、だよね?なんか、夜蛾先生みたいな服着てるし…目隠し、それ、どうしたの?髪の毛逆立ってて、知らない人みたー、」

声を聞けば、記憶の中の彼女がどんどん色付いていく。まるで、あの時に戻ったと錯覚するほど、彼女は当たり前に彼の名前を呼ぶ。無警戒に歩み寄ってきたなまえは、ふいに、その足と言葉を止めた。
それまでただ呆然となまえを見つめていた五条は、彼女の瞳に、疑念の色が混じったことに気づき。そこで、ようやく、我にかえった。

後退ろうとしたなまえの腕を、反射的に掴む。逃すまいと。反対の手で、自らの目を覆い隠す布を無造作に取り払って。

驚いた顔をする彼女を、遮る物が何も無い、至近距離から真っ直ぐに見下ろした。
手から伝わる温度も、目から入る情報も、彼女が、生きてここにいるのだと、訴えてくる。


「ははっ……僕、頭おかしくなったのかな」


思わず、くしゃりと髪を掻き乱す。
あり得ない。彼女の死を見届けたのは自分なのだ。
あり得ないはずなのに、握った彼女の腕を、離すことなんでできなかった。離せば、この現実も消えてしまいそうだなんて、彼には似合わない女々しい考えが浮かんで。
そんな五条を訝しげに見上げて、恐る恐るなまえが口を開く。


「あの……ごめんなさい、人違いで…。五条悟、さんの…親族ですか?」


控えめに首を傾げる彼女に、思わず息を呑んだ。先程、微笑んでくれた筈の彼女は、今は知らない人間を見る目で、五条を見ていた。


「…親族?」

「そ、その、五条悟、さんによく似ていらっしゃるので…。あ、私は悟さんの同級生なんですけど…」


言いながら、チラリと掴まれた腕を見る彼女は、おそらく腕を離してほしいのだろう。全く離す気のない五条は、その視線に気づかないフリをして、彼女の言葉の意味を考える。

あの頃の姿のままの彼女。その姿と同じく、彼女の時間が、あの頃のままであるのならば、時を経た自分は、彼女の記憶にある五条悟とは別人に見えているのかもしれない。

思わず、腕を掴んでいる手とは反対の手で、彼女の頬に触れる。

「君は…」
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