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花火 ー呪術廻戦ー

第13章 再会


2人が話す言葉は、五条にとって大切な人間を思い起こさせることに十分だった。
そんな訳がないはずなのに、確かめないなんて選択肢はなかった。

「恵、ちょっと二人を頼んだ。支払いは僕がするから、先に店に行ってて」

そのまま、驚いた表情をする3人を残して、瞬間移動でつい先程実地訓練をした廃ビルへと移動する。
先程は、廃ビルの中に虎杖と釘崎がいたから気付かなかったのか、微かに感じる呪力の気配。早まる鼓動に、違うと言い聞かせる。

自分の大切なものは、もうずいぶん昔に喪われたのだ。自分の、目の前で。

彼女の名を騙る、何か。その目的は何なのか。罠の可能性も十分にあるだろう。
消え入りそうなほどの呪力の気配は、警戒するにも値しないが、彼女の名前を騙ることだけは、決して許せない。

廃ビルへと足を踏み入れて、足早に呪力の気配がする方へと向かう。


「(あの部屋か…)」


階段をいくつか上り、見つけた、気配の元がいるだろう、部屋。
さっさと、自分の気を惑わす正体を暴かなければと、部屋の入口を覗き込んで。



五条悟は、柄にもなく、ただ、呆然と立ち尽くした。


部屋の奥にある窓から、外を見下ろすように立つ、小柄な人影。高専の制服を纏い、風に揺れる黒髪。その後ろ姿は、遥か昔のはずの記憶を、鮮やかに呼び起こした。

ふと、その小さな肩が揺れて、警戒するように、五条の方を振り返る。

動けないまま、息を呑んだ。
そこにいたのは、記憶にあるままの、失った筈の、彼の大切な人で。そんな訳がないのに、力を持つ彼の目が、彼女は本物だと、五条にとって大切な人間だと、告げてくる。
何より、彼の魂が、叫んでいた。目の前にいる彼女は、自分の愛しい人であると。


「……なまえ?」


思わず、確認するように呟いた言葉。
それに、彼女は途端、どこか緊張していた表情を崩して柔らかく笑った。
何も変わらない、高専で一緒に過ごした、あの時の姿のまま。その笑顔に、心臓が強く鳴る。
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