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大正鬼殺譚 〜炎柱の継子〜

第5章 変化





美玖と共に帰ってきた翌日、

杏寿郎は、父親の部屋の前に居た。


…父上から部屋に呼ばれるなど…

一体、いつぶりだろうか。



最終選別を終え
隊士になった時も、

十二鬼月を倒し
柱となった時も、

父は辛辣な言葉とともに、
背を向けたままだったのだ。



…。
父上、杏寿郎です。



…入れ。



っ…失礼します!



父上の部屋へ入ると、

父は座卓を部屋に置き、

しっかりと着物を着て座っていた。



……。
杏寿郎は久々に見る、
父のちゃんとした姿に驚いていたが、

そのまま、黙って腰を下ろした。



父上、一体どのような…


杏寿郎が口を開くと、
槇寿郎は、一口お茶を口に含み、

飲み込むとそのまま話し始めた。



杏寿郎…
今まで、すまなかった!

俺が不甲斐ないばかりに、
お前には、要らぬ苦労を背負わせてしまった。

杏寿郎は、立派な息子だ…!

俺が引き取ってきた娘を
立派な隊士に育て、
千寿郎の父代わりとして、
今日まで面倒を見てくれた。

…本当によくやってくれた。



…父上…
俺は、自分の責務を全うしたまでの事…



そうだな。お前は、
自身の成すべき事を成せる。
もう、立派な大人の男だ。

そこで、
もう既に杏寿郎に任せきりではあったが、

煉獄家の家督を正式にお前に譲る。


嫁を迎え、この家を守って行け、杏寿郎。



…!

父親から、
このように自身の事を語られる日がくるなど、
夢にも思っていなかった事だ。

杏寿郎は目の奥が熱くなっていた…。


…途中までは。



よ、嫁などと…
考えた事もございません!父上!


突如、自身の嫁取りの話にすり替わり、
杏寿郎はひどく狼狽していた。



…何故だ?
お前はもう二十になっただろう。

もうとっくに祝言を上げていてもいいくらいだ。


…俺がしっかりしていれば、
今頃子供の一人二人居た事だろう…。

瑠火に、怒られてしまうな…。


父はそう言って自嘲気味に笑う。



父上、母上は、そのような事、
気にされておりません!

父上が立ち直ってくださって、
きっと、喜んでいる筈です。


…そうか。



槇寿郎が、ふっと笑うと、


つられて杏寿郎も笑うのだった。





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