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大正鬼殺譚 〜炎柱の継子〜

第5章 変化





槇寿郎は、

部屋で一人、物思いにふけっていた。



ー…


美玖と初めて出会ったのは

任務で鬼狩りに出た先での事。



鬼を滅し、任務終了かと思われた時、

一軒の屋敷から悲鳴が上がった。


急ぎ駆けつけると、
たった今、鬼になったような男が、

屋敷の住人を襲っていた…。


襲われた、この家の夫人が、
事切れる寸前に、

あ…なた…なんで……こんな事……


と呟いていた。

恐らくこの鬼はこの家の主人。



っ…!
むごいことを…。
何故、鬼を増やす…!



急に鬼にされ、
訳もわからず家族を喰い殺す男に

同情のような感情を抱くが、
それも一瞬の事…。


炎の呼吸 壱ノ型 不知火


次の瞬間には、鬼の頸が床に転がる。



槇寿郎は刀を鞘に納めると、

屋敷の住人達を探した。


…母親と、息子二人の屍が見つかる。


この家は、これで全員なんだろうか…

まだ探していない部屋に入り確認していると、

押入れから、小さな音がした。



押入れの戸を開くと、

まだ8つくらいの娘が、
押入れの布団の中で眠っていた。


…!


この家の家族が隠したのだろう。

鬼になってしまった父親から、
この幼い娘を守る為…。


槇寿郎の胸の奥から、
熱いものがこみ上げてくる。



何も知らず、
すやすやと眠っている娘。


誰か、頼れる親族などはいるだろうか…。


そのような事を思いつつ、
娘を抱え、屋敷を出た。



ー…後日、
他に頼れる親族が居ない事を聞き、

槇寿郎は自分の家で引き取る事とした。



ー…あれから7年。

まさか、隊士になるとは思わなんだ。


その後、俺は、自分の弱さ故、
自暴自棄に振舞い、

自ら引き取った美玖を
…顧みることもなかった。


結局、美玖の事も、千寿郎の事も、
杏寿郎一人に任せきりになっていた。


その結果、
杏寿郎の背を追うように
剣士を目指したのは、自然な事だったろう。



…不甲斐ない…。
俺はいつまでこうしているつもりなんだ。

そろそろ、向き合わねばなるまい。


夏の終わり、

蒸し暑さも和らぎかけた頃、

槇寿郎は静かに決意したのだった。



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