第2章 比翼連理
「いや、半分はお前のせいだろ。
あんな誘い方しやがって…」
「〜〜!もう言わなくていいです!」
宇髄さんの口を両手で塞ぐ。
何をしたかなんて全く覚えていない。
そんな事言われたって証拠はないし、事実かどうかもわからない…
ちっとも悪びれない宇髄さんに
上手いことはぐらかされた。
身体中痛いのに…文句のひとつも言えず仕舞いだ。
彼は私の手をはずし指を絡めてくる。
「はいよ…もう言わねぇから」
空いた手で、ポンポンと頭を撫でてくれる。
あ、宇髄さん、眠たそう…。
ちょっと可愛い。
そのまま、すぅっと眠りに落ちた宇髄さんの
きれいな顔を見ていると、
なんだか私も眠たくなってくる。
つないでくれた手をきゅっと握り返して、
私は宇髄さんに包まれたまま目を閉じた。
夢を見ていた。
広い空間に1人、男の子が膝を抱えていて、
いじけたように私を見上げてくる。
何か言っているけれど、声は聞こえない。
睨むようにして、ぷいっとそっぽを向いた。
私が何かを渡すと、
びっくりしたようにこちらに向き直り、
あの、
睨んでいた顔からは想像できないくらい
優しく、微笑んで見せたのだ。
ただ、それだけの夢。
誰なんだろ。小さな男の子。
…
本格的な春。
何なら、少し暑いくらい。
私は宇髄さんに手を引かれ、
いつもの商店街を歩いていた。
…手は引かれなくてもいいんだけど。
ここは顔見知りが多い。
そこを、こんな、ね。
手をつないで歩くなんて、恥ずかしい極みだ。
どれだけ拒んでも、しつこく握ってくる宇髄さんに、
諦めて好きなようにさせたけれど、
やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしい。
せめて、と下を向いて歩く私をチラリと見て、
「んな嫌がられると傷つくな」
ボソっと言う。
「嫌なんじゃないです。知ってる人に見られるのが恥ずかしいんです」
「…俺は恥ずかしいんか」
「っ…そうじゃなくて私がですよ!」
わからないかな、この気持ちが。
「宇髄さんの事は自慢しまくりたいくらいです」
「…お前そんな事ヘーキで言うくせに、コレがそんな恥ずかしいのか」
そう言ってつないだ手を持ち上げる。
「その台詞の方がよっぽど照れるわ」
そっぽを向く宇髄さん。
あ、ほんとに照れてる。
「照れるのと恥ずかしいのは別です」