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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第1章 嚆矢濫觴




ガタガタ震え出す私に狼狽る宇髄さん。
私は、腕をつかんでいる宇髄さんの手を、思い切り払いのけた。

怖い。
怒られた。また悪い事をしてしまったんだ。

「睦、悪かった!」

宇髄さんが私に手を伸ばす。
それを見た途端、私は両腕で自分の頭を庇い、
その場にうずくまった。

「嫌だ‼︎ごめんなさい!もう殴らないで‼︎」

怖い、怖い怖い、

「ごめんなさい!ごめん、なさ……
お願い…なぐらな…で…」

私は涙を止められない。
昔の記憶の、せいだってわかってるのに。

「睦!睦、殴ったりしねぇ。
ごめんな、ごめん!」

宇髄さんは、つとめて優しい声音でそう繰り返し、
私を抱きしめようとする。
でも私は殴られないようにと、
その手をはねのける。

「嫌…いや‼︎」

体は震えるし、涙は止まらない。
この人は宇髄さんで、あの人じゃない。
わかってる。
わかってるのに…

「睦、俺が悪かった。許してくれ。
お前が謝る事じゃねぇ。ごめん、ただの、
みっともねぇ嫉妬だ」

でも…

「睦、1週間、会えなくてつらかった。
頼むから、抱きしめさせてくれ。睦、好きだ」

宇髄さんの長い腕は、
簡単に私を絡めとる。
未だパニック状態の私は
そこから逃れようとする。

「うぅ…うぅぅ…」

言葉も出ない。

「睦、俺を見ろ」

優しい声で、囁くように言う。

「睦、俺は誰だ?」

そんなの、宇髄さんだ、わかってるよ。
でも、震えは止まらない。

宇髄さんの胸を思い切り押し返すと、
それ以上の力で抱き込まれる。
私を落ち着かせるように、背をさする手。

「うぅ…」

私は呻くような声しか出せない。
逃げ出そうとする自分の体を
無理矢理押さえ込んだ。

この人は大丈夫だと自分に言い聞かせるが、
小さい頃のトラウマが邪魔をする。
心の中で必死に戦う。

「睦、淋しかった。
お前に会いたかった」

宇髄さんはさっきの過ちをかき消すように、
想いを言葉にしてくれる。

「睦、好きだ」

宇髄さんは私の頭を撫でてくれる。
何度も何度も。

——会いたかった?…私に?
好き?あんな怒鳴り方しておいて?
そんな事、あるだろうか。



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