第52章 スルタンコラボ更に追加　〜睡蓮の願い〜

それでも私の頭には
もし間違っていた時の事がチラついて

おずおずと彼の胸に寄り添った。


「…足りん」


頭上から、不満たっぷりな呟きが降って来る。

違う！と言われたような気がして
びくりと肩を竦めると

「おい」

低く呼びかけられた…

あぁあやっぱり間違いだったのかな
怒られるかな
叱られるかな
呆れてポイされるかな

「……はい、」

恐々返事をすると
またまた呆れたように大きなため息をつかれる。

私はもう耐えられなくて
天元に何かを言われるよりも先に

「すっ…捨てないで…！」

そんな事を叫んでいた。

「はぁ？」

彼はわけがわからないといった様子だったが
私は臆病であるが故に顔を上げる事が出来ず
天元の胸元を必死になって凝視めたままいるのが
関の山だった。


だって、怒って、呆れてポイだ！


「ごめんなさい、お願いだから…
私を捨てないで…っ」

止まりかけていた涙がまた溢れてくる。

「天元の事だいすきなんだよぅ…うぅ…」

「おい、何を勘違いしてんだ？
捨てるってなんだよ」

広げていた両手を私の肩に置いて
さっきまでとは一転優しく問う。

「だって…怒って、…呆れて…
捨てられるぅ…！」

「いや、捨てねぇわ。
勝手に話を進めんなよ。つーか意味わかんねぇし」

「だって…もう、愛想尽きた…？」

止まらない涙を拭もせず
やっと顔を上げた私の目に
やっぱり不機嫌そうな天元の顔が映った。

でも、すぐに
頭を抱えるように抱きしめられてしまい
視界は再び塞がれる。

「あ″ー、尽きた尽きた、」

「…っ！」

天元のストレートな物言いに
私は一瞬で絶望の淵に突き落とされた。
でも
この優しい腕のおかげかな…
闇に飲み込まれまではしないで済んだ。

「だからほら、取り戻せよ」

「……へ？」

脱力してしまって
まともに話す事もできないよ。
取り戻す？って言ったの？

「…なに、を？」

「俺の心に決まってるだろ？
お前は全て取り零してる。
だから取り戻せ、俺を捕まえろ」

捕まえる

そう聞いた途端に
天元がどこかへ行ってしまう画が頭に浮かんで
私は慌てて彼の背に両腕を回した。
そして、強く強く力を込める。