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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第5章 消息盈虚




「睦ちゃんは、家族だ。
大切な娘だと思ってる。何があったって、
ちゃんと見守ってるからな」

あ、そうだ。
この人たちはいいんだった。
どんな私でも、笑い飛ばしてくれる。
安心して、甘えていいんだった。
何という幸せだろう。

「ありがとう」

そんな言葉じゃ、伝えきれないよ。

「私を、家族にしてくれてありがとう」

おじちゃんはふっと笑った。

「俺を泣かせてもいい事ないぞ」

「…泣かないでしょ」

私も、笑う。

「睦の事は別だ」

「…そ?」

危うくまた泣いてしまいそうになった私は、
さっと立ち上がる。

「顔洗って来るね!」

「そうか。じゃ俺も始めるかね」

「手伝う?」

「いや、そろそろ志乃も起きて来る」

「そうか。…じゃ私、一旦行くね」

「あいよ。気をつけてな。…犬とかな」

2人でぷっと笑う。

「はぁい」

ありがとう。
…ありがとう。











私は家を出て、ゆっくり歩いた。
おばちゃんがくれた黒い下駄は
カラコロと小気味の良い音がする。
やけにすっきりとした気持ちで河原を歩く。
…そのすっきりな気持ちとは裏腹…
鏡で自分の顔を見た時は驚いたけど。
この、
目の腫れ方と言ったら。
気休めに冷やしてみたけど、
すぐに引くわけのないひどいものだ。
人通りのないこの時間で良かった。
まるで別人だった。
お店も休みたいくらいだ。
化粧でも隠し切る自信がない。


川の流れる音と一緒に、
朝の光も流れ込んでくる。
薄明るかった景色が、いっぺんに色づいた。
朝って、きれいだなぁ…。
水面に陽光がキラキラ反射して。
…眩しい。
鳥たちも起き出したのか、そこかしこで鳴き始める。
あぁ、1日が始まるんだなぁ、なんて
当たり前の事を考える。

見えてくる、この川沿いの一軒家。
ちょっと、ホッとする。
あっちも家だけど、こっちも家だ。
贅沢。

門をくぐり、戸のカギを開けると、
何だか家の中の空気が淀んでいるような気がした。
換気をしよう。
朝のキレイな空気を入れなくちゃ。
今ならもう、日の光も部屋の中に差すだろう。

私は手始めに縁側の雨戸を開けに行く。
1番大きいし、お日様の方向だ。
きっと良い気が入ってくる。
私の暗い気持ちを、払拭してくれる。



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