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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第5章 消息盈虚




湿気を含んで
動きが悪くなった雨戸をガタガタ揺する。
力を込めて、ガラリと引いた。

途端に、
庭にしゃがみ込んでいるものを見つけて
びくっとすくみ上がる。

「……っ‼︎」

声にならない叫びを上げると、
ひどく恨めしそうな目が私を見据えた。


「朝帰りかぁ…」

「……」

「弁解があんなら聞いてやってもいいぜ」

低く唸るような声がする。

「……」

私は、ただ眺める事しかできずにいた。
これが、だれなのか。
わかっているけど、わからないフリをした。
だって、もし、違ったら…

「…どちら様ですか…」

私の言葉に驚愕の表情を浮かべる宇髄さん。
…ホントに宇髄さんか?

左目に眼帯のような装飾をつけ、
髪を下ろし、センスのいい着物を纏っている。

「それが昨日の夕方から待ってた俺に、
1番にいう言葉か!」

「…何で、待ってるんですか」

「いねぇんだから待つだろ」

「お店にいるの、知ってますよね」

「もう帰る頃かと思うだろうが」

「おじちゃんとこのお手伝い…」

「そうだとも思ったが、
帰ってくるもんだと思ったんだよ!」

アレ、
こんな話ししてる時なのかな。
普通に言い合いしてる場合?

私が黙ると、焦ったように私のそばに駆け寄って
顔を覗き込む。
そして、ホッと、息をついた。

「…?」

私が何事かと見ていると、その視線に気づいた彼は

「…泣いてんのかと思って」

照れたように言った。

「え、泣いて?…そん、なの…」

私が発した声の異変に、ハッとこちらを見て、
みるみる目を見開いていく。

「そんなの…泣くに、決まってますー」

「待て待て待て!」

慌ててぎゅっと私を抱きしめてくれる。
あぁ…あー、もう、言葉もない。

私は彼の首に思い切り抱きついて、
また泣いてしまった。
今日はもう、目が開かないと思うよ。



何で今日なの?
よりによって、こんな不細工に目を腫らした日に。
おじちゃんちで寝ちゃって、ヨレた着物の時に。
タイミング悪すぎる。
普段から特別きれいにしてるわけじゃないが、
それにしたって、…
あぁ。
あぁでも、もうどうでもいい。
この人が、ここにいる。
私は腕に力を入れ直す。

「ごめんな、長いこと1人にして。
もっと早く来たかった」

苦しそうに言う宇髄さん。
私は声にならなくて、ただ首を横に振った。




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