第1章 ※煉獄杏寿郎
ピキピキッ…!!!ザシュッ…!!
月明かりだけとはいえ、雲一つない満月の今宵は木の葉の先までよく見える。
「おのれ…鬼狩りめ……」
首を斬られた鬼は恨み言を呟きながらボロボロと朽ちていった。
「……、可哀想に…」
私は憐憫の言葉を口にする。
『よもや!もう片がついていたとは!!
同じ柱として不甲斐なし!!!』
このバカでかい大声は、炎柱の煉獄杏寿郎だ。
『久方ぶりだな!カヲル!!カヲルの援護に向かえと言われて来てみたが、全くの無駄足だったな!!!』
「杏寿郎、久しぶり。相変わらずの声の大きさだね」
私は忙しい中来てくれた杏寿郎に愛想も無く答えた。
しかし彼はそんな事は一切構わない。昔からだ。
『それにしてもまた一段と腕を上げたのでは無いか!どのような鍛錬を行なっているのだ!??』
『『カァァァァァ!炎柱!氷柱!!藤の家紋の屋敷で休息を取れェェェェ!!!』』
杏寿郎の話を遮るように鎹烏に休息を促される。
それはそうだ。別に文句がある訳ではないが、ここ数週間、あまりまともに休めずにずっと鬼と戦っていた。風呂にもなかなか入れずに、会うのは隊士か鬼ばかり。世間の17歳の女子なら耐えられない生活だろう。
「行こう、杏寿郎。あまり遅くなると藤の家にも迷惑だから」
私達は道中に会話らしい会話もせず、藤の家に向かった。