第2章 ep.01 憎むべき存在
──その日の夜
フリントは隣のベッドで眠るリディアの気配がない事に気が付いて目を覚ます。
すると、やはり隣にリディアはおらず変わりに下から呻くような声が聞こえる
リディア
「う…ぁ…っ」
フリント
「リディア…!」
ベッドから飛び起きリディアに駆け寄る。
いつもしているように腕の布を取ろうとしたが
リディア
「ま、って…」
フリント
「は?」
リディア
「机の上、の…薬…」
震える指先で机上を示すのを見ればフリントは思い出して慌てて立ち上がり、そこに置いてあった小袋を破り中から一つの錠剤を取り出し
フリント
「ほら、リディア。…飲め」
リディアの唇を開かせて小さな粒を飲ませる。
数分経つと荒かったリディアの呼吸は落ち着いた
フリント
「おお、この薬…本当に効くんだな」
感心して呟くフリントを見ながらリディアは身体を起こす
リディア
「ありがと、フリント」
フリント
「どういたしまして。…今日、血を流し過ぎたんだな。朝やったばかりなのに、感覚が短すぎる」
リディア
「うん。…ここからどれだけ効くかだね」
フリント
「だな」
二人はまた各々のベッドに身体を沈めて朝まで休んだ─…
昼になると昨日、言った通り広場で食べ物の配給が始まった。
寒くなってきたからスープにしたいと言うリディアの案と野菜を摂れない貧しい人達の為に野菜を多く入れようと言うヴィンスの提案で、野菜が沢山入ったスープを作る事になった
裕福な者達が通らない広場にはスープの前に沢山の人が列を作る
ヴィンス
「はーい、どうぞ」
少年
「ありがとう…!」
フリント
「はいよ」
少女
「ありがと、お兄さん!」
リディアが注いだ具沢山のスープをヴィンスとフリントが配っていく。
だが、ノムは手伝ってはいるものの不機嫌さは消えない
ノム
「ほら」
おじさん
「ありがとう…あんた達は良い人だな」
スープの器を受け取ったおじさんはノムを見ながら心底嬉しそうに笑みながら感謝を述べる。
それにはノムも照れ臭そうにそっぽを向きながら、いえ…と呟いた