第2章 ep.01 憎むべき存在
──リビング
ミフウが医務室から戻ってきて椅子に腰掛けて三人に混ざる。
ヴィンス
「リディアは?」
ミフウ
「心臓もちゃんと動いてるし、今は寝てる。…神経使って疲れたみたいだね」
ヴィンス
「そう」
フリント
「ノム」
二人の会話が終わって、暫くするとフリントの声が響いた。
声を掛けられたノムは返事はしなかったもののフリントへ視線を向ける
フリント
「あいつ…リディアはな、行く村行く村でガキに花を飾るように言ってたんだ」
ノム
「は?何でそんな事…」
突然の言葉に眉間にシワを刻みながらも不思議そうにノムは問う
フリント
「自分を受け入れてくれた人達を襲わねーようにだ」
ノム
「………っ」
フリント
「他の吸血鬼より匂いが平気っつったって、あいつにも花の匂いはきついんだ。前に聞いた時、見るのは好きだけど匂いは無理って言ってたしな。…ヴィンスは昨日、聞いただろ」
ヴィンス
「嗚呼。花や香水の匂いは吐きそうになる…って言ってたね」
フリント
「そういう努力してる奴を知ろうともしてねー奴が、全部一纏めにして知ったような口聞くんじゃねぇ。腹が立つ」
ノム
「…………」
フリントとリディアが出会って11年が経つ。
長い年月、共に過ごしてきてリディアを良く知り…他の吸血鬼とは違うと一番知っているフリントの言葉には怒りが込められていた。
それを向けられたノムは気付かされた様な、でも受け入れる事が出来ない事情が彼にもある
ヴィンス
「…ノム」
ノム
「?」
ヴィンス
「リディアがね、食べ物を貧しい人に配給したいって俺に言ってきたんだ」
話の真意が見えないノムは怪訝そうにヴィンスを見詰める
ヴィンス
「ミフウは留守番だけど、俺とフリントは行く。君も来なさい」
ノム
「は…?」
ヴィンス
「分かったね」
有無を言わせないヴィンスの笑みにノムは小さくと頷いた