第2章 ep.01 憎むべき存在
ノムとリディアが向き合い、フリントは近くの丸太に腰掛けた。
ノムは腰にかけていた短剣を片手に握り、リディアは少し悩んでからワンピース内の右太腿に携帯していたダガーを取り出した。
リディア
(かわすだけ…)
フリントは心配していた。
リディアは死にたがりだ、攻撃はせずに殺られようとするんではないかと。
ノム
「行くぞ、吸血鬼」
リディア
「うん」
ノムが一気に間合いを詰めてリディアに斬りかかるが、彼女は軽い身のこなしでワンピースであるのも気にせずバク転をした。
だが、既に体勢を変えていたノムはリディアの腕を掴み短剣を握ったままの拳を彼女の腹部へめり込ませる。
その弾みでリディアは握っていたダガーを落としてしまった
リディア
「うっ…!」
そして、腕を掴んだまま地面にリディアの背中を叩き付けると苦痛に彼女の目が見開く
ノム
「思ったより強くねぇな…?」
馬鹿にした様に笑うノムが地面に仰向けに転がり唇の端から血を流しているリディアに馬乗りになる。
フリントが止めようとするも、ノムがもう一本の短剣を腰から抜いてフリントへと素早く投げる
フリント
「……く…っ」
それをフリントはかわすと眉間にシワを刻む。
助けに行こうにも阻まれる。短剣は0になったから突っ込もうと思ったが、ノムの腰に銃が刺さっているのが見えてフリントは留まる
フリント
(思ったよりも…やる奴なのかよ)
ノム
「オレは吸血鬼が……大嫌いなんだよ…!」
ノムが憎しみや殺意に表情を歪ませ短剣を振り上げて思い切り振り下ろすと─
リディア
「あぁ…!」
鋭い短剣の先はリディアの心臓を突き刺していた。
ノム
「あんた等、吸血鬼は厄介だよな。心臓を刺したくらいじゃ死なねぇ…首もなんてさ…!」
フリントはリディアが抵抗しないのを最初から知っている。
寧ろ彼女からしたら絶好のチャンスな筈だ。
だが、彼女が生きようとする方法もフリントは知っている