第2章 ep.01 憎むべき存在
──翌朝
フリント
「リディア」
ベッドの上で胡座をかいたフリントがリディアを誘う。
すると、リディアは少し眉を下げつつも彼の脚の上へ背中を向けて腰を下ろすとリディアの前に牙痕がいくつも残った腕が回される
リディア
「………っ」
ぎゅうっと目を瞑りながらリディアがフリントの内側の薄い皮膚に牙を立て力を込めると、耐えられなくなった皮膚が破れて血が溢れる。
牙をたてられているのはフリントの筈なのに、まるでリディアの方が立てられているのではないかと思う程に彼女はポロポロと涙を流す。
そんな彼女をフリントは決まってあやすように頭を撫でながら吸血させる。
少ししてフリントが筋肉に力を込めると、リディアは牙を押し込むのを止め筋肉から力が抜けるのと同時に彼女は牙を皮膚から抜く。
そして、真新しい傷から垂れる血を綺麗にするように舌を這わせて拭う
リディア
「ごめんね。…ありがと、フリント」
フリント
「どういたしまし……ぁ」
布を元の位置に戻しながらフリントは思い出したように切れ長の目を大きくする
フリント
「そういや、衝動薬を試すために吸血させたら駄目なんだっけか」
リディア
「ぁ……そうだった」
フリント
「慣れって怖」
二人は暫く見詰め合った後、まあいっかと笑った
リディア
「え?」
ノム
「付き合えよ」
朝食の席にはつかなかったリディアが皆の食器をフリントと洗っている時に、ノムから話し掛けられ彼女は驚いた
ノム
「この地下の上の…少し行った所に原っぱがあんだよ。訓練なんだから付き合うだろ?」
フリント
「どういう風の吹き回しだ?」
ノム
「別に。吸血鬼は身体能力が高ぇんだろ。だから、向上するには丁度良いと思ってな」
生意気な、揶揄った様な笑みを向けて言葉を吐くノムへフリントは鋭い視線を向けたが、リディアは頷いていた
フリント
「…ったく。おい、俺も見学させろ」
ノム
「手を出さないって約束すんならな」
フリント
「ちっ。分かった」
そして、三人は地上へ出て少し歩いた所にあった雑草が風で揺れる広い空き地へ来た