第2章 ep.01 憎むべき存在
リディア
「待ってノム…!」
ノムを追い掛けたリディアが彼の腕を掴むと簡単にその手を振り払い、振り向き様にドンッと大きな音をたてて彼女を壁へ張り付ける
リディア
「ぁ…っ…」
彼の右腕側面がリディアの首を圧迫し、左手で彼女の細い二の腕を壁に押し付けられてリディアは苦悶の表情を浮かべる。
片目を瞑りながらもリディアは赤い瞳をノムへ向け声を絞り出す
リディア
「ノム、が…っ…吸血鬼を、嫌ってるの…分かる。だか、ら…私は…一緒に、ご飯食べないように…する、からっ…だか「黙れ」
地を這うようなノムの声と更に喉を圧迫して止められれば、リディアはそれ以上の言葉を吐けなくなってしまう
ノム
「その、きたねぇ口でオレの名前を呼ぶんじゃねぇ」
リディア
「ごめ…っ」
ノムは鼻先が触れそうな程、リディアに顔を近付け
ノム
「あんたが此処に居る事をオレは認めたわけじゃねぇし、オレはあんたを受け入れない」
その言葉を最後にノムはリディアを解放して自分の部屋へ戻ってしまった。
残されたリディアは腰を抜かして床に座り込みながら涙目で咳をする…が、苦しさとは別にリディアの表情は少し嬉しそうにも見える
リディア
(彼なら…)
フリント
「リディア、大丈夫か?」
ミフウ
「悪いね、リディア」
咳き込むリディアをフリントが立ち上がらせ、ミフウは腰に手を当てて息を吐きながらリディアへ謝罪する
リディア
「はぁ…っ…大丈夫。私、嫌われるの慣れてるから」
ミフウ
「……慣れるんじゃないよ、そんなもの」
複雑な表情を浮かべながらミフウはリディアの額を人差し指で弾く。
初日から問題はあったものの、それ以上の事はなく各々の時間を過ごし夜は更けていった─…