第2章 ep.01 憎むべき存在
ミフウ
「へー、何だ。上手いじゃないか」
リディア
「そうかな」
ミフウ
「嗚呼。フリントに作ってたの?だって、あんたは食べないだろ?」
リディア
「ううん。私、人間の食べ物が好きで自分の分も作ってたよ。…ただ、食べ過ぎちゃうと気持ち悪くなっちゃうからあんまり食べられないんだけど」
今はリディアとミフウが夕飯を二人、並んで支度している
普通の吸血鬼は人間の物は食べないが、自分は食べるというリディアの言葉にミフウは一瞬驚いた表情を見せたものの鍋の中を掻き混ぜながら苦笑する彼女を見て、ミフウは目を細めた
ヴィンス
「仲良くなったみたいで良かった良かった」
二人の様子をリビングの椅子に腰掛けながら眺めていたヴィンスが嬉しそうに呟くと、その向かいに居たフリントも同意するように頷いた
リディア
「此処にこれを入れると美味しくなるんだよ」
ミフウ
「そうなの?」
リディア
「うん。…ほら」
スープを小皿に注いでリディアはミフウへ味見をさせようと差し出す。
それを、受け取ったミフウはスープに口をつけて眠た気な目を丸くした
ミフウ
「んっ。何だい、これ。凄い美味しい」
リディア
「良かった」
嬉しそうに笑うリディアと褒める様に彼女の頭を撫でるミフウは何だか姉妹のようだ。
それから数分後。
木製の机上には食欲をそそる香りを放つオニオンスープにオムレツと少しのパンが並べられた。
ヴィンス
「美味しそうだ。…じゃあ、いただきます」
暖かい雰囲気の中、各々で挨拶をしてから食事に手をつけようとした時にその空気を鋭い声が邪魔する
ノム
「吸血鬼が作ったやつなんて何が入ってるか分かんねぇだろ。…食うの怖ぇし。そもそも吸血鬼の顔見ながら飯なんか食えるかよ」
ガタッと音をたてて椅子から立ち上がったノムをフリントは睨んでいたが、ヴィンスとミフウは小さく溜め息を吐いていた。
そのまま扉から出て行くノムを追い掛ける者は一人もいない
フリント
「リディア…!」
一人だけいたのだ。
リディアはフリントが止めるのも聞かずに立ち上りノムを追い掛けて廊下へ出る