第2章 ep.01 憎むべき存在
小袋に入った粒を受け取ってリディアは頷く。
リディア
「これを飲んでから次に衝動がくるまでの間を教えれば良いんだね」
ヴィンス
「そう。宜しくね」
リディア
「分かった」
ヴィンス
「取り敢えずはこんなとこかな。…また気になった事があれば聞くよ」
その後、ヴィンスは二人に拠点を案内した。
地下にあるその拠点はそこまで大きくはないものの二人からしたら豪邸のようなものだ。
キッチンとリビングもトイレとお風呂も分かれているし、医務室や研究部屋に個人部屋まである。
案内をされている最中、二人は声もなく何度も驚きていた。
リディア
「広い所だね」
フリント
「そうだな」
二人は与えられた部屋に入り床に腰掛けながら呟いた。
一人ずつの部屋を用意していたが、それをリディアが断ってフリントと同部屋にしてもらったのだ
リディア
「でも、此処は簡単には外に出れなさそう」
フリント
「ん?…あぁ、匂いの話か?」
リディア
「うん。…だけど、この辺はまだ人が少ない方なのかな」
フリント
「だろうな。大通りよりはましだろーよ」
リディア
「そっか、そうだよね」
大きく少し垂れている目の中で赤い瞳が不安気に揺れているのを見たフリントは、小さく笑みを浮かべてリディアの頭に手を乗せると彼女の瞳がフリントを映す
フリント
「大丈夫だって。何とかなる」
何とかなる、特に解決には繋がっていない言葉でもリディアはフリントから力強く言われる言葉に何度も助けられてきた。
そして不思議と何とかなる、と思えるのだ
リディア
「そうだね。何とかなるね」
あどけなく笑うリディアにフリントはしっかりと頷いてやる。
それから、フリントは彼女の頭から手を離して口を開く
フリント
「俺、暫くは用心棒を休もうと思って」
リディア
「どうして?」
フリント
「環境もがらっと変わったし、今回は一緒に暮らす人間が居る。…そんな所にお前一人、残して行けねぇだろ。吸血鬼、嫌いもいるしな」
リディア
「フリント…」
フリント
「好きでやってんだからな?」
リディア
「ん。…嬉しかったから」
目を細めるリディアにフリントは、安堵したように笑みを返す