第2章 ep.01 憎むべき存在
ミフウ
「凄くなんかないよ」
リディア
「……っ」
自分が思っていた事を当てられたリディアは驚いたように瞬きをした
ミフウ
「あたし集中すると他人の心が読めるってゆー変なもん持ってんの。何かあんたの事、気になったから読んでみた…驚かせちゃって悪かったね」
謝るミフウにリディアは慌てて首を振った。
ヴィンス
「ほら、ノムの番だよ」
ノム
「吸血鬼なんかに教える名前はねぇよ」
フリントの片眉が、ぴくっと動いたが特に言い返したりはしない
ヴィンス
「こら…全く。あー、彼はノム・カディアン…17歳、俺とミフウの助手」
ノム
「ばっ…助手じゃねーよ!」
ヴィンス
「だって、ノムが自分で言わないから俺が代わりに言ってやったんだよ?文句は受け付けてない」
ノムに向かってヴィンスが掌を向けて制されるのを拒むのを見て、癖のないチョコレート色の髪を持つノムは軽くつり上がった大きい黄色の目をヴィンスに向けたまま黙る
ヴィンス
「さて、挨拶終了。…リディア、研究部屋へ行こう」
リディア
「うん」
─────…
────…
ヴィンス
「で?何で君も居るのさ」
椅子に腰掛けたままヴィンスは、壁に背を預けて腕組みをしながら立っているフリントに視線を向ける
フリント
「お前がリディアに変な事しねぇか監視してんだよ」
ヴィンス
「君の保護者は心配性だね」
リディア
「そうかな?」
不思議そうに首を傾げるリディアを見て、ヴィンスはこれが普通なのかと理解した。
ヴィンス
「まぁいいか。…じゃあ、質問ね」
リディア
「うん」
ヴィンス
「リディアはどれくらいの期間で吸血衝動が来るの?」
リディア
「え?えーっと…」
考えた事のない問いにリディアは考え込むように顎に手を当てた
リディア
「大体フリントの仕事が二週間で終わるから…それ以上を越えると衝動くる、のかな…」
ヴィンス
「ふむ…フリント。君は彼女に血を与えてるのか?この前の夜みたいに」
フリント
「嗚呼。俺が居る時は朝と夜にこの腕から直接やってる」
そう言いながら左腕肘下に雑に巻いてある布を軽く巻くって何個も内側に残る消えなくなった牙痕を見せる