第4章 鍛錬と最終選別
え?と、杏寿郎の口から疑問が溢れ出た。
「過去を悔やんでも悲しんでも、失くしたものは戻りません。それならばずっと泣いているより、今この時を杏寿郎さんと笑って過ごして、あぁ、あの時泣いてばかりじゃなくて笑っていてよかったと将来思いたいです。だから、その……そばにいさせていただいてもいいでしょうか?」
思慕の念を杏寿郎に抱いていると、きっと本人は気付いていないだろう。
そして杏寿郎もそれは分かっている。
だが、今はそれだけでも十分だと感じている。
本人が気付いていなくても、自分に届いていれば幸せだと。
(思い上がりだろうか?)
心の中で苦笑しつつ、その考えを出さないようにして答える。
「聞くことではないだろ?俺は望んで君を弟子にして、最終選別後は継子にと言ったんだ。今更更紗を手放す気はない」
すると更紗はフフッと笑う。
「笑うところがあったか?」
キョトンと聞き返す杏寿郎に、更紗は体ごと勢いよく振り返って笑顔を向けている。
「杏寿郎さんが手放さない限り、私は杏寿郎さんのそばから離れませんよ?」
杏寿郎は顔を赤くして視線を更紗から外す。
(無自覚で無意識ほど罪深い!!理性が飛ぶからやめてくれ!)