第4章 鍛錬と最終選別
そろそろ出発と言う頃に、パタパタと小走りで居間に近付いてくる足音がした。
「兄上、更紗さん、おはようございます!間に合って良かったです。握り飯を作りましたので、道中召し上がってください」
千寿郎がにこやかに登場し、挨拶と共に大きな竹で編んだ弁当箱を差し出してきた。
2人は挨拶を返すも、弁当箱のあまりの大きさに驚いた。
「千寿郎、まさか1人で朝からこの量を作ってくれたのか?」
杏寿郎の問いに千寿郎は少し悩む素振りを見せるが、ニコッと笑って2人にコソコソと教えてくれた。
「初めは1人だったのですが、たまたま通りがかった父上が手伝ってくださったんです。大きなおにぎりが父上が握ったものですよ」
杏寿郎は驚き呆然としているが、次第に千寿郎の笑顔につられるように子供のような笑顔になった。
更紗はその様子が泣きそうなほど嬉しいのか、うっすらと涙を浮かべている。
「父上も作ってくださったのか!それは完食以外に選択肢はないな。帰ったら感謝を伝えなければ」
「はい!その際はぜひ私もご一緒させてください」
「きっと父上も喜んでくださいますよ!」
3人で笑い合いながら玄関へ向かって歩き出した。