第4章 鍛錬と最終選別
近くで見ても陶器のように滑らかな肌。
いつも潤っている綺麗な瞳に目を奪われそうになるが、杏寿郎は鋼の精神で乗り切り、滑らかな頬に自分の掌でそっと触れる。
「俺も重症だな……」
不思議そうに首を傾げる更紗に苦笑いを浮かべ、頬から手を離すと気持ちを切り替え、しゃがんで自分の刀を手に取り羽織で隠れるように腰のベルトに差し込む。
「更紗の刀も人里離れるまで俺が持っておく!このご時世、帯刀は許されていないからな!」
「そうだったのですね!言われてみれば街で刀を差してる方、いませんもんね。では、お言葉に甘えて途中までお願い致します」
「うむ!気付いているとは思うが、人里を離れ次第、君はこれを袴に差して全集中の呼吸を途切れさせず全力で走ること!俺もそれに合わせて走るから、俺の事は気にしなくていいぞ!」
さすが鬼師範、恐ろしい事を簡単に言ってくれる。
だがきっとこれくらいしないと更紗の体質上、最終選別を通過する事が難しいと本人が一番分かっているので、素直に頷いて刀を杏寿郎へ預ける。
「言い忘れていたが、人里離れるまでの道中も途切れさせることなく呼吸を続けて歩きなさい」
「え……??」
「よもや異論あるまい?」
刀や着物などを用意してもらった更紗に異論など唱えられるはずもなく、力なく是と頷くしか出来なかった。