第4章 鍛錬と最終選別
手馴れたもので、更紗は道着を脱ぎきちんとしまった後、杏寿郎が見立ててくれた着物の袖に腕を通す。
着心地が良く、すごく軽い。
袴用なのか膝くらいの長さしかないので着物としては着れないが、袴を履くとゴワゴワせず丁度いい。
キッチリと綺麗に着付け、杏寿郎の待つ居間へ昨日受けとった刀を持って移動する。
「もしかしてこの刀を差して走るのでしょうか……?しかも全集中の呼吸を駆使し続けて……胡蝶様のお屋敷に無事辿り着けるといいのですが」
一抹の不安を胸に居間へ入ると、宣言通り杏寿郎が座って待っていた。
杏寿郎は自分が送った袴を着た更紗の姿を見て、眩しそうに目を細めて穏やかな笑顔を見せた。
「あぁ……綺麗すぎて目眩がする」
思わず心の声が出てしまったようだが、出した言葉は戻らない。
一瞬取り繕うか迷った杏寿郎だったが、本当の事なので諦めたように一息つくと、立ち上がって更紗の前へ移動する。
「杏寿郎さんが見立ててくださったから、きっとそのように見えるのですよ」
更紗は照れから顔を桃色に染めるが、嬉しそうに杏寿郎を見つめる。
「それだけだといいが……似合いすぎて他の輩に見せたくなくて困った」