第4章 鍛錬と最終選別
翌朝、更紗は清々しく目を覚ました。
それは起きてすぐに鍛錬用の道着に着替え、髪もあっと言う間に結い上げられた事が証明している。
そして更紗が部屋を出ようとした時、その向こう側から杏寿郎の声がした。
「ここを開けても大丈夫だろうか?」
ちょうど開けようとしていたところだったので、更紗は
はい
と返事をして自ら襖を開けた。
「おはよう!更紗!もう着替えも済ませているとは、いい心掛けだ!」
相変わらず朝から声が大きいが、特に更紗は気にする様子はなくニコニコしている。
「おはようございます、杏寿郎さん。もう出発ですか?」
更紗がそう判断したのは、すでに杏寿郎が隊服を着用し炎柱の象徴である燃えているような羽織を肩にかけて、手に風呂敷を抱えているからだ。
だが、杏寿郎は否と答えた。
「いや!これを持ってきたのだ」
そう言って風呂敷をハラリと解き中身を自分の腕に掛けて見せ、更紗へと差し出した。
そこには濃い紅色の袴と淡黄蘗(うすきはだ)色に青海波(せいかいは)の模様を全体に染め入れ、袖や所々に赤い梅が描かれている美しい着物だった。