第4章 鍛錬と最終選別
杏寿郎の考えた事は正解だ。
幼い時に攫われて以来、誰にも甘えられず寝る時はもちろん一人ぼっちだったのだ。
十数年ぶりに人肌に触れる事により、幼少時代両親と眠った記憶が呼び覚まされこのようになってしまった。
(このままでいても起こしても罪悪感が酷い……)
その犠牲者が杏寿郎とは神様も無情である。
これがしのぶであったなら、なんの罪悪感も抱かず抱き締めて一緒に寝てあげるだろうに。
「仕方ない……あと一刻だけだぞ」
(あと一刻、あと一刻)
杏寿郎の特技は起きたい時間にキッチリと起きられること。
これで万が一寝てしまっても問題ないだろう。
頬を撫でていた手を頭に移動させ頭を撫でてやると、気持ちよさそうに更に胸元に顔を擦り寄せてくる。
(フフッ、まるで仔猫のようだな……本当に愛らしい。このまま抱き締められたらどんなに幸せだろうか……いや、この状況も十分幸せか)
そうして杏寿郎もうたた寝したが一刻後にはキッチリ目を覚まして更紗を抱えて更紗の部屋へ移動し、布団の上に寝かしてやりようやく苦しくも幸せな時間は終わりを告げ、杏寿郎は自分の部屋で存分に休むことに成功した。