第4章 鍛錬と最終選別
「うぅ……杏寿郎さん!何から何まで本当にありがとうございます!」
そう言って更紗は杏寿郎の手を満面の笑みでギュッと握りしめた。
「……ーーー!!」
(あぁーー……決心した事が揺らぎそうだ……だが、揺るがさない代わりに……)
「これだけは許してくれ、更紗」
そう呟いて握られている手を自分の方へグッと引き寄せ更紗の体を近くにやると、今は下ろされている長い髪が揺れる細い肩に自身の額を軽く置く。
「杏寿郎さん?」
不思議そうに呟く声がすぐ近くで耳をくすぐる。
それさえも心地いいと言うように、杏寿郎は開けていた目をゆっくり閉じた。
「すまないが、もう少しだけこのままいさせてくれないか?」
初めこそ体調が悪いのかと心配したがどうやらそうではないのだろうと更紗が感じ取ると、いつも杏寿郎が更紗にしているように優しく頭を撫でた。
(君はそうやって、無意識にいつも決心を揺るがしてくる)
杏寿郎はそう胸の中で思ったが思いのほか心地よく心穏やかになれたので、何も言わず少しの時間更紗に身を委ねた。