第4章 鍛錬と最終選別
「どうだ?続けられそうか?」
床を磨いている更紗に、杏寿郎は鬼師範の顔を脱ぎ捨て笑顔で聞いてきた。
その質問に更紗は間髪入れずに答える。
「もちろんです!まだ完璧には程遠いですが、次に同じ鍛錬をする時には絶対に今日より上手くします!」
そうして更なる気合いを込めてゴシゴシと床を磨く。
更紗が磨き終えた床は顔もうつしてしまいそうなほどに綺麗で、そっと杏寿郎は感嘆のため息を漏らす。
「それならいい!思わずあんな口調で叫ぶくらいだ!心配はしていなかったぞ!」
杏寿郎はピクッと反応して顔を上げた更紗の傍で跪き笑顔で目線を合わせる。
言われている事が理解出来た更紗は徐々に顔を赤くして両手で隠してしまった。
「き、聞こえていましたか?」
「あぁ、しっかりとな!」
なるほどと更紗は心の中で納得した。
あの道場に戻った時の妙な雰囲気は自分が作り出していたのだと。
「すみません、咄嗟に出ていて悪気があった訳では……」
小さな小さな声に杏寿郎は思わず笑いが込み上げてきたが、笑ってしまっては二度とあのような言葉遣いが聞けないような気がして必死に抑えた。