第3章 元人間のヴァンパイア
「お願い…っ。ルキ兄…もう、やめて…。」
「俺は…お前が…。」
っ…!
私は慌てて振り返って、ルキ兄の唇を手で塞ぐ。
「……ルキ兄はアダムになるんだよ。
そのために…私はここに居る。」
「っ…。アリス…。」
気付かなかった。
ルキ兄がそんな想いを持っていたなんて。
でも、ダメ…。
私はその気持ちには応えられないし、ルキ兄には使命がある。
イブの血を手に入れ、アダムになるという。
「……ごめん。ルキ兄。」
私がそう伝えると、ルキ兄は静か脱衣場から出ていった。
……ルキ兄は、元人間だから…恋心は忘れてなかったんだね。
それとも、ヴァンパイアにも…恋心なんてあるのかな。
私は…分からない。